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テクニカル分析とファンダメンタルズ分析
投資の方法は色々ありますが、その中には「王道」と言われる分析手法があります。
最近は「誰でも簡単にはじめられる」といった謳い文句の、いわゆる「テクニカル分析」を売りにした広告などをSNSなどでよく見かけますが、投資の本質はあくまでも「ファンダメンタルズ分析」であり、より確実に大きな成果を求めるプロ(ヘッジファンドや機関投資家)は必ずこの分析を主体としています。
投資・分析の手法は様々ありますが、大きく分けると「テクニカル分析」と「ファンダメンタルズ分析」の2つに大別することができます。
テクニカル分析とは、チャート(株価が上下するグラフ)を見て売買のタイミングを判断する分析手法です。
移動平均線やボリジャーバンド、RSIといった様々な指標やデータを用いて、トレンドから短期的な動き(次の値動き)を予想し売買します。
チャートだけを見れば良いので、経済や経営などの知識がなくても簡単にできる(と言われている)点や、短期間で大きな利益が狙いやすいというメリットがあります。
一方で、あくまでもパターンからの予測に過ぎないため、なかなか当たらず損をするリスクや、売買手数料がかさみやすいといったデメリットがあります。
あくまでも個人的な見解ですが、テクニカル分析は”お遊び”に過ぎず、本気で資産運用するのには向いていません。
※実際、FXをタダで楽しむためのスマホゲームもあります。
株価の予測をするのに、その会社の経営状態や決算(業績)に目を通さないなど、あり得ません。
もし本当に過去のチャートのパターンや傾向から短期的な未来を予測できるのだとしたら、将来的にAIが投資すれば100%勝てる未来になってしまいます。
実際に、ヘッジファンドのようなプロや機関投資家でテクニカル分析を主体に大きく安定した利益を得た人はいません。
一方のファンダメンタルズ分析は、会社の業績や経営状態、経済動向、金融政策など、株価を構成するより“本質的”な要素に着目する分析手法です。
より真に迫った分析をするには、綿密な情報収集やそれを読み解く専門知識、緻密な分析など高い専門性が求められます。
また、全体的に結果が出るまで時間がかかる傾向がありますが、正しく全ての情報から会社の価値が評価できれば、より確実に株価の上下を予測することができます。
会社(株価)を左右する究極の情報は内部情報です。
それを利用した株の売買が「インサイダー取引」として禁止されていることからも、情報がいかに重要かがわかります。
メリット | デメリット | |
テクニカル分析 | 取っ掛かり安くはじめやすい 短期間で結果が出る |
あくまでもゲーム性が強い |
ファンダメンタルズ分析 | より本質的な価値があり中長期で確実な利益が狙える | 高い知識や専門性が必要 結果が出るまでに時間がかかる |
そんなファンダメンタルズ分析の中でも、今回は「バリュー投資」に絞って掘り下げて解説していきたいと思います。
バリュー投資は、ファンダメンタルズ分析を理解するのに最もわかりやすい基本中の基本であり、最も本質的な考え方です。
このサイトでも何かと取り上げているBMキャピタル(BM CAPITAL)もバリュー投資を軸に運用しています。
バリュー投資を理解することは、ファンドのようなプロの投資を理解することにも繋がります。
BMキャピタルとは
名称 | ビーエムキャピタル合同会社 |
英名 | BM CAPITAL LLC |
所在地 | 〒106-0032 東京都港区六本木7-18-1 |
事業目的 | (1)金融商品取引法に基づく有価証券及びデリバティブ取引 (2)各種事業への投資 (3)有価証券の自己募集 (4)経営コンサルティング業務 (5)前各号に附帯する一切の業務 |
参考:BMキャピタルHPより
バリュー投資とは
そもそも「バリュー投資」とは、ベンジャミン・グレアム(Benjamin Graham)というアメリカの投資家が提唱した考え方で、会社の本質的な価値(value)に着目する考え方です。
彼は今日「バリュー投資の父」とも呼ばれています。
グレアム氏を師と仰ぐ投資家の1人にウォーレン・バフェット氏がいます。
※ウォーレン・バフェット(Warren Edward Buffett):
アメリカの投資家であり、資産家。
世界最大のヘッジファンドであるバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway Inc.)の会長兼CEO。「オマハの賢人」「投資の神様」とも称される投資の世界の第一人者。
11歳で投資を始めたと言われているバフェット氏の総資産は、現在9兆円(880億ドル)以上とも言われており、世界3位。また、2000年以降だけで、約5兆円(460億ドル)以上も慈善団体に寄付をしていると言われており、世界で最も多額の寄付をした慈善家としても知られている。
彼も提唱しているように、本質的に価値があるものに投資することでリスクを抑え、中長期目線でコツコツと資産を積み上げることが資産運用において最も重要です。
その中でもバリュー投資は最も基本的であり、本質的な考え方です。
グレアム氏は、「株価とは会社の価値を反映しているものである」という前提の元、会社の本質的な価値(value)から株価が大きく逸脱していた場合、株価は修正されていくという考えから「会社の本質的な価値を適切に見極め、十分に割安な銘柄に投資することで投資の安全性を確保する」という手法にたどり着きます。
これがバリュー投資です。
バリュー投資と対になる考え方に「グロース投資」があります。
バリュー投資が、会社に既に内在する価値に着目し、割安な銘柄に投資するのに対し、グロース投資では今後成長(growth)する会社を探し出して投資します。
グロース投資も、会社の業績や経営状態、商品・サービスの品質など、会社の本質的な側面に着目するため、ファンダメンタルズ分析ですが、「実績」と「のびしろ」とで着目するポイントが異なります。
※一般的に「投資」というと、「第2のAppleを探そう!」などのように今後成長する会社を見出すイメージがあるかもしれませんが、あくまでもグロース投資という数ある投資の考え方の1つに過ぎません。
バリュー投資のやり方
バリュー投資では会社の価値(value)に着目しますが、一口に「会社の価値」と言っても簡単ではありません。
最も一般的でわかりやすいものに、決算で発表されている「BS(貸借対照表)」などがあります。
会社の持っている「資産」や、そこから負債を差し引いた「純資産」は公表されているので、それらの数字を元に考えるのがバリュー投資の第一歩です。
公表されている「資産」や「純資産」元に株価の割安具合を算出するのが最も一般的です。
バリュー投資で最も定番の指標はPBRでしょう。
- PBR(株価純資産倍率):株価 ÷ 1株あたりの純資産
このPBRの値が小さければ小さいほど割安ということになります。
もし、1より小さくなった場合、会社の価値よりも株価の方が低くなっているため、最低でも会社の資産価値と同等にまで株価に値がつくと考えれば、ほぼ確実に株価が上がることが期待できます。
では、PBRを調べてそれがなるべく小さい会社に投資すればOKかというと、そんな簡単な話ではありません。
会社の決算には様々な情報が盛り込まれており、貸借対照表(BS)についても一般的な項目だけで以下のようになります。
現金や有価証券はそのままの価値がありますが、そのほかの資産についてはどうでしょうか。
建物や土地など、簿価には示されていても実際の価値はそれほど高くない可能性は十分にあります。のれん代や特許権などの価値は判断が難しく、実際にどの程度の価値があるかはきちんと見極める必要があります。
売掛金などは実際に回収できるかはわかりません。
「ビジネスの世界においてそんなバカな」と思う人もいるかもしれませんが、相手が支払ってくれない限りいつまでも帳簿上の資産として残るのみで実質的な価値はないのです。
これらの不確実で不透明な資産の価値について、「どう評価するか」がバリュー投資を行うファンドや機関投資家の腕の見せ所です。
評価の仕方は様々あります。
実際に自社で調査を行い、第三者機関などと連携して客観的に現実的な資産価値を算出することもあります(不動産などは、実地調査を行うことも珍しくありません)。
「簿価の50%で評価する」といった、統計的な処理をする場合もあるでしょう。
「不確実なものは皮算用には入れない」として、ゼロで見積もることもあるかもしれません。
バリュー投資は「会社の価値と株価を比べて割安な会社に投資する」という、本質的で非常にシンプルな考え方ですが、「会社の価値をいかに正確に見積もるか」という点に投資家の腕がかかっています。
会社の価値を評価した上で、さらに「どの程度の割安具合を基準に買付を行うのか」も投資家によって異なります。
「会社の価値>株価」であれば買付を行うというのが一般的ですが、よりシビアに評価するために「株価が会社の価値の80%未満」をボーダーラインに設定する投資家もいます。
あまりにもシビアになると適格な投資先の数が非常に絞られてしまうため注意が必要です。
実際、世の中の株価はPBR1を上回るものも非常に多く、業績分の評価が+αになることを見越して「株価が会社の価値の120%未満」などと、少し高めに設定する場合もあります。
※日本のPBRは平均すると1.5程度です。
会社の価値を見積もることがゴールではなく、それを前提にした上でバリュー投資はまだまだ奥が深いのです。
バリュー投資の特徴
このように緻密で裏付けのあるバリュー投資には、様々な強み・メリットがある一方で、その上でハードルとなる注意点やデメリットも存在します。
それぞれ順に見ていきましょう。
バリュー投資の強み・メリット
バリュー投資の最大のメリットは、「会社の価値(value)」という裏付けに伴う値崩れのしにくさです。
既に割安である株式は、仮に業績が悪化したとしても、会社の資産に価値が裏付けられているため、値崩れするリスクは非常に小さく損をしにくいという強みがあります。
また、定量的で客観的な数値を元に判断をするため、適切な評価や売買の基準を明確にできれば、再現性が高く、より確実にパフォーマンスを継続できるというメリットもあります。
- 値下がりするリスクが小さく損をしにくい
- 理論に再現性がありパフォーマンスを継続できる
バリュー投資の注意点・デメリット
一方で、ここまで解説してきてお気づきの方もいるかもしれませんが、バリュー投資は決して簡単ではありません。
細かいデータまで集める情報収集能力が求められますし、緻密な分析や、それに基づいた評価など、専門的な知識や高度な分析力が求められます。一つ一つの会社を丁寧に分析するため、ある程度の時間や労力も求められます。
加えて、バリュー投資では成果が出るまでにある程度の期間が必要になります。
割安な株が、明日突然適切な株価に戻るかはわかりません。株価が戻るためには、何かしらのきっかけが必要であり、それが起こるまで数ヶ月〜年単位で待つことも必要になります。
- 専門的な知識や、高度な分析力が必要
- 結果が出る(利益を得る)までに、ある程度の時間がかかる
ヘッジファンドなどの場合、バリュー投資で発掘した会社に対して働きかけ、業績の改善や株主への利益還元などをフォローし、株価の向上に働きかけることでより早く・確実に利益を生み出すなどの施策を並行して走らせることもあります。
堅実なバリュー投資をベースとしつつ、それ以外にも第2、第3の武器を駆使するのです。
バリュー投資を実践するには
バリュー投資についてまとめてみましょう。
- 会社の価値(value)に着目し割安な会社に投資する手法
- 会社の評価やその基準は様々であり複雑
- 値下がりするリスクが小さく、再現性があり安定したパフォーマンスが期待できる
- 高い専門性が必要であり、時間も必要
これらの特徴を見てみると、バリュー投資は「プロ向き」であり一般の投資家には少し難しいのかもしれません。
実際に、プロの投資家(ヘッジファンドや機関投資家など)はファンダメンタルズ分析をベースとしている場合が大半です。
ですが「リスクを低く、安定したパフォーマンスを継続する」ことこそ一般の投資家にとって最も重要であり、なんとかしてバリュー投資を実践したいという考えもあります。
一般投資家がバリュー投資を実践するには、バリュー投資で運用しているファンドなどを活用して間接的にバリュー投資を実践するのが最も効率的でしょう。
ヘッジファンドであれば、専門性や資金力には問題なく、また投資家側に高い専門性がなくとも同等のパフォーマンスが享受できます。