目次
「ファンド」とは
皆さんは「ファンド」という言葉にどんなイメージを持つでしょうか?
いわゆる「ヘッジファンド」のような投資機関をイメージする人もいるでしょうし、最近は「投資信託」のこともファンドと呼びます。
ファンド(fund)とは、直訳すると「基金」という意味があり、目的のために資金を集める活動や組織のことです。
金融の世界においては、投資・運用によって資金を増やすことを目的にお金を集める仕組みやその組織を指します。
ファンドには様々な種類があり、その仕組みや規模、投資対象などによって分類されます。
様々な形・種類のあるファンドですが、最もメジャーなものはやはり「投資信託」でしょう。
投資信託は、投資する地域や業界などのテーマを設定し、あらかじめ決めたテーマに沿って運用します。
そのテーマでの運用が儲かると思うのであれば、証券会社で取り扱われている投資信託という「証券」を通じて投資することができます。
そして、もう一つ注目のファンドが「ヘッジファンド」です。
ヘッジファンドは、複数の投資家から資金を集めて投資する資産運用の専門機関で、元々は欧米諸国の富裕層や資産家を中心に支持されてきました。
その歴史は古く、1949年にアルフレッド・W・ジョーンズがアメリカで設立したものが元祖とも言われています。
日本では今まであまりメジャーなものではありませんでしたが、資産運用をする人が増えてくる中で、国内ヘッジファンドも台頭してきており、少しずつ身近になってきています。
そんな投資信託とヘッジファンドは同じ「ファンド」ではありますが、その性質や特徴は大きく異なります。
それぞれどんな特徴があり、どちらがおすすめできるのか比較しつつ考えていきましょう。
資産運用の方法としては、株や不動産がメジャーではありますが、初心者がいきなり株・不動産に手を出すのは簡単ではありません。
3,761社もある(※2021年3月22日時点)株式の中から、業績が安定・向上している会社を探し出し、株価が上がるのかどうかを見極め売買をするのは、一朝一夕でできるものではありません。
また、不動産は、業者が強く仲介手数料も高額のため、素人が有料物件を手にするのは至難の業です。
そういった背景もあり、昨今「ファンド」での運用に人気・注目が集まっています。
投資信託とヘッジファンド徹底比較
ここでは同じ「ファンド」として一括りにされてしまっている投資信託とヘッジファンドを以下の5つのポイントに沿って比較していきます。
- コンセプトの違い
- 手数料の違い
- パフォーマンスの違い
- 募集方法の違い
- 必要資金の違い
コンセプトの違い
投資信託は、先述の通りあらかじめ決められた「テーマ」に則って運用されます。
運用のテーマは様々ありますが、最新(2021年3月22日時点)のランキングで上位にきている投資信託がどんな運用をしているのか見ていきましょう。
- グローバル・プロスペクティブ・ファンド
:破壊的イノベーションを起こし得るビジネスを行なう企業 - デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド
:生活や社会のデジタル化に関連するビジネスを行なう企業 - 次世代通信関連世界株式戦略ファンド
:次世代通信関連企業 - ひふみプラス
:市場価値が割安と考えられる銘柄 - グローバルAIファンド
:AIの進化、応用により高い成長が期待される企業 - netWIN GSテクノロジー株式ファンドBコース
:テクノロジーの発展により恩恵を受ける米国企業 - インベスコ世界ブロックチェーン株式ファンド
:世界各国のブロックチェーン関連株式 - ティー・ロウ・プライス米国成長株式ファンド
:成長性が高いと判断される企業 - グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド
:積極的なESG課題への取り組みとその課題解決を通じて、企業の競争優位性が持続的に維持され、成長が期待される銘柄 - GSフューチャー・テクノロジー・リーダーズAコース
:テクノロジーの活用または発展により恩恵を受け、将来のリーダーになると期待される企業
特に最近は、AIや5G関連、仮想通貨に関連するブロックチェーン系の企業に投資するものが人気のようです。
投資信託での運用を検討する場合には、これらのテーマの中から「本当に株価が上がる、儲かる銘柄」を自分で選んで投資しなければいけません。
投資信託は、決められたテーマに沿って運用されるため、そのファンドができるだけ大きな利益を出そうとあれこれと工夫して運用するわけではありません。
確かにAIや5G、ESG投資などは、今後の成長が期待されていますが、その投資信託(ファンド)が選んでいる企業が本当に有力なのかどうかを見極める必要があります。
また、テクノロジーや産業が成長していたとしても、企業の業績に反映されるかどうかはわかりませんし、仮に業績が良かったとしても株価が上がるとも限りません。
既に割高なレベルまで高騰してしまっている株価の場合、業績が良くても株価が下がる可能性は十分に考えられます。
これらの点も考慮して、銘柄を選ぶ必要があるのが投資信託です。
一方のヘッジファンドは、投資先や運用の方法はあまり厳密に限定されていません。
ファンドごとに大まかな方針や哲学(例「割安株に投資してリスクを抑えた運用をする」)はあれど、時と場合によって様々な手法や投資先を的確に組み合わせて運用します。
そのため、ヘッジファンドに投資する際に重視するべきポイントは
- そのファンドがどんな哲学、方針で運用しているのか
- 運用を担っているファンドマネージャ(責任者)の実力は信頼に足りるか
になります。
投資信託が予め決めたテーマに沿った運用をすることを目的としているのに対し、ヘッジファンドは、少しでも確実に、より大きな利益を得ることを目的としています。
市況の変化や経済情勢によって投資対象が変わる可能性もありえる(変えてでも利益を追求する)のがヘッジファンドです。
優秀なファンドマネージャには、投資に対して重要視している理論や哲学があり、急に180度運用の内容が変わることはほとんどありません。
その人が「柱」としている投資理論や哲学に共感した人がそのファンドに出資しており、その哲学を全うするために適切な投資先を追求します。
投資信託:テーマに沿った運用
>>> 儲かるテーマを自分で選ぶ
ヘッジファンド:理論・哲学に沿った運用
>>> 信頼できるファンドマネージャに投資する
手数料の違い
予め決めたテーマに沿って運用する投資信託の主な収入源(手数料)は「信託報酬」です。
信託報酬とは運用している間(投資信託を保有している間)、継続してかかり続ける費用であり、運用を代行してもらっていることに対する手間賃のようなものになります。
手数料の割合は投資信託によって様々ですが、年0.5~2.0%程度が目安になります。
一方で、ヘッジファンドは「運用によって利益を出すこと」が目的のため、ファンドが求める主な手数料は「成果報酬」になります。
成果報酬は、運用によって得られた利益に対して課されるため、ヘッジファンドは運用で成果を出し続けなければ事業としての収益を得ることはできません。
成果報酬の目安は、運用益の20~50%程度が目安になります。
※ほとんどのヘッジファンドは、成果報酬に加えて信託報酬も合わせて課されます。
一見すると、成果報酬のない投資信託の方が割安でお得なようにも見えますが、成果によって収益が左右されない投資信託は、運用に注力するモチベーション・インセンティブがありません。
極端な話、預かり資産が減らなければ運用の成果がずっとマイナスでも問題ないのです。
「成果報酬を取らない」という投資信託の手数料体系は、ファンド組成の目的を「運用益を得る(資産を増やす)ため」ではなく「資金を集めるため」にすり替えてしまうという大きな問題を生み出します。
これはいわゆる「手数料ビジネス」として金融庁にも問題視されています。
先述の投資信託人気ランキングも、本当に儲かるテーマが多いかというと疑問が残ります。
「AI」「ブロックチェーン(仮想通貨)」「ESG」など、耳障りのよいトレンドのキーワードを設定することによって詳しいことがわからない素人投資家から資金を巻き上げることを重視しているようにも見えます。
投資信託:信託報酬メイン。成果報酬はなし
>>> 適切な報酬が設定されていない分、内容に不安
ヘッジファンド:成果報酬メイン。信託報酬もある
パフォーマンスの違い
投資信託はテーマに沿って運用されるため、時流や経済情勢に大きく左右されるものがほとんどです。
中には特定の経済指標(TOPIXやS&P500など)に連動するように運用されるインデックス投信なども存在します。
そのため、投資信託のパフォーマンスは、株価が上がれば好調になり下がれば不調になり安い傾向にあります。
実際、コロナショックの際には多くの投資信託が大暴落し、たくさんの投資家が大損を被りました。その後の株価の回復によって、投資家は息を吹き返していますが、市況に左右される限り、今後どのようになるか予測がつきません。
一方のヘッジファンドは、市況から独立したパフォーマンスをするように運用されます。
運用の成果にファンドの収益が左右されるため、「市場が下がり気味だから損をしてしまった」などと悠長なことは言っていられないのです。
市況に左右されないように運用する方法は様々ありますが、以下のような手法が代表的でしょう。
- 売りと買いを組み合わせる
- 市況に景況されにくい小型株で運用する
- 資産価値が高く値動きが安定する銘柄に投資する
実際、ヘッジファンド業界全体のパフォーマンスは市況を大きく上回っており、またリーマンショックのような下げ局面でもその下げ幅を最小限に食い止めており、長期的に着実な資産形成に繋がっていることがわかります。
出典:日銀レビュー 最近のプライベート・エクイティ・ファンドの増勢について
出典:モーニングスターカンファレンス2015~2015年の投資環境~採録 | モーニングスター 特集
投資信託:市況に影響を受けやすい。
ヘッジファンド:市況に影響を受けず独立して成果を出す。
募集方法の違い
投資信託は証券会社で売買することがでます。
証券会社に口座を開設してしまえば、たくさん並んでいる銘柄の中から自由に選んで売買できます。
一方のヘッジファンドは、証券会社などを仲介せずに、個々のファンドと直接契約し出資します(「契約」というと大袈裟に聞こえますが、保険に加入するようなイメージで大丈夫です)。
そのため、ファンドを一覧で比較することは難しく、気になるファンドを一つ一つ自分の力で探し、見つけ出さなければいけません。
優良そうなファンドが見つかった際には、直接問い合わせて資料請求し話を聞くようにしましょう。
投資信託:証券会社で自由に売買
ヘッジファンド:それぞれのファンドと直接契約
必要資金の違い
投資信託は、銘柄にもよりますが、安いものであれば1,000円程度から投資をはじめることができます。最近は、積立投信として100円からスタートできるものも売られているため、まだ資金力のない人でも簡単にはじめることができます。
一方のヘッジファンドは自社で募集し直接契約することもあり、何万〜何十万人もの投資家から資金を集められるわけではありません(一般的に数百人単位)。
そのためヘッジファンドでは、一人一人の投資家からある程度まとまった資金を集める必要があり、一般的な金融商品の中でも最低出資金額が高めに設定されています。
金額はファンドによって様々ですが、最低でも数百万円〜1,000万円程度を目安にしましょう(世界的なヘッジファンドの場合、1億円単位で出資を募ることもあります)。
投資信託:1,000円から。100円から積み立ても
ヘッジファンド:最低でも数百万〜1,000万円が目安
投資信託とヘッジファンド比較まとめ
ここまで比較してきた投資信託とヘッジファンドの違いをまとめると以下のようになります。
投資信託 | ヘッジファンド | |
コンセプト | テーマに沿った運用 > どの業界が儲かるのか自分で判断 |
投資理論・哲学に則った運用 > 優秀なファンドマネージャに一任 |
手数料 | 信託報酬がメイン > 資金を集めることが目的に |
成果報酬メイン > 運用によって利益を得てこそ |
パフォーマンス | 市況に影響を受ける | 独自の高いパフォーマンス |
募集方法 | 証券会社で売買 | それぞれのファンドと直接契約 |
必要資金 | 1,000円から | 最低数百万円〜1,000万円が目安 |
どちらも同じ「ファンド」として一括りにして考えてしまう人もいるようですが、投資信託とヘッジファンドには大きな違いがあることがわかりました。
同じ「ファンド」でもまったくの別物です。
それぞれにメリット・デメリットがあり、求めるものによって適切な投資先は異なります。
最後にどちらのファンドがおすすめなのか考えていきましょう。
おすすめのファンドはどちらか
一般に多くの投資家に人気があるのは「投資信託」の方です。
- 少額から簡単に始めることができ
- 手数料も安い
ことなどが人気の理由として考えられます。
また、トレンドのキーワード(AI、ESG投資など)に投資するのは、金融に詳しくない人にとって、非常にわかりやすいセールスポイントで、ついつい簡単に手を出してしまいたくなるのです。
もちろん、テクノロジーが進歩し経済が発展すれば、将来的に大きな利益を得ることもできるかもしれませんが、金融の世界はそんなに単純ではありません。
株価が上がらなければ利益も得られませんし、株価は業績だけで簡単に判断できるほど単純なものでもありません。
会社の業績に加えて資産価値によっても上下するだけでなく、金利や世界情勢などによって株式市場全体が上下することもあります。
これらの複雑な要因まで含めて適切に判断することは非常に難しく、投資初心者が投資信託でに安定して利益を得るのは容易ではありません。
資金面でのハードルはありますが、可能であればできる限りヘッジファンド運用することをおすすめします。
ヘッジファンドであれば、株式市場や経済情勢に関わらず投資のプロであるファンドマネージャが適切に運用してくれますし、長期的に安定して資産形成するのに適しています。
手数料を気にする人もいますが、結果私たちの手元にリターンが返ってこないのであれば、どんなに割安な手数料でも意味がありません。
極端な話、資産が増えるのであればいくら手数料を払っても良いのです。
目先の手数料や、パッと見の雰囲気に惑わされることなく、本質的により良い投資先を選ぶようにしましょう。